2022.12.27 Omiaiレポート

恋と歌謡~①日本人はセンチメンタル?

全5回に渡ってお届けする「恋と歌謡」、今回は第1回です。
あの人との出会い、あのときの切ない気持ち、楽しかったあのとき…。恋の思い出を振り返ると、いつもこの曲が脳内再生されるという経験、ありますよね? 恋と歌は、切っても切れない関係です。そこで今回は、昭和・平成・令和の人気ソングの変遷を恋愛視点で紐解いてみました。

通信カラオケで業界最多の楽曲数を誇る『JOYSOUND』様に絶大なるご協力をいただき、34 万曲以上の配信曲の中から恋愛ソングだけを抽出してランキング。
みんなの心に寄り添い、愛されてきた時代ごとの歌謡曲について徹底分析します。

人気の恋愛ソングは哀しく切ないセンチメンタル系

業界最多の楽曲数を誇る通信カラオケ『JOYSOUND』が発表した、2022年カラオケ年間ランキング TOP10 をもとに分析すると、10 曲中 7 曲が恋愛ソングということが判明! 歌謡曲の中でも特に恋愛ソングの人気が高く、“恋と歌は切っても切れない関係 ” であることが、このランキングからもよくわかります。

日本人は恋愛ソングを好む傾向が強いといわれていますが、日本独自の文化が関係しているのかもしれません。
日本最古の歌集『万葉集』や平安時代の和歌集『古今和歌集』には恋の歌が数多く存在し、1,000 年以上前に活躍した女流歌人・小野小町は有名な恋の歌をたくさん残しています。日本人が恋愛ソングを好むのは、このような文化的背景も影響しているようです。

さらに和歌の時代から悲哀、切ない感情をのせた歌は人気があり、現代の恋愛ソングにもそれが受け継がれています。
ランキングを見ると1 位『ドライフラワー/優里』、2 位『シンデレラボーイ/Saucy Dog』は、もの悲しい “ センチメンタル系 ” の恋愛ソング。抽象的な恋愛ソングもランクインしていますが、メロディにセンチメンタルな要素が多分に含まれています。

ランキングからもわかるように、日本で親しまれている歌謡曲の中では、恋愛ソングが特に人気で、その中でもどこか哀しい、切ない感情を表現した“センチメンタル系”の楽曲が支持を集めています。では、どうしてハッピーな恋愛ソングよりも感傷的な楽曲を好むのか?
そのメカニズムを「恋愛学」の森川友義先生に解説してもらいました。

「恋愛学」の森川先生に聞きました!
センチメンタルな楽曲が、恋愛の苦しみから解放してくれる
人が音楽を聴く主な理由は、「癒される」「気分が盛り上がって楽しくなる」「元気がもらえる」からです。
恋愛の過程には、片想い、相思相愛、失恋の3つがあります。この中で最も癒されたい、楽しくいたい、元気が欲しい気持ちにさせるのが、恋愛を成就できない「片想い」と「失恋」です。
相思相愛はすでにたいへん元気で楽しい状態なので、改めて音楽を必要とはしません。片想いは短期間(ネット上のアンケート調査を総合すると片想い期間は平均1年)かもしれませんが、ひとりで相思相愛を願う切ない気持ちを伴います。
「失恋」は、この世の中で死別を除くと最も苦しくて悲しい経験です。大好きな相手が突然いなくなるわけですから、失恋で大きな痛みを感じるのは当然といえます。人はこのように片想いや失恋の痛手を払拭できない時に、センチメンタルな音楽を必要とします。
聴くことで自分の恋愛と重ねて「片想いから一歩踏み出せる」「失恋の傷を癒せる」「自分の悲しみが自分だけではないという共感を得る」といった効用が得られるのです。恋愛学の視点で考えるとセンチメンタルな恋愛ソングが人気なのは必然といえます。
早稲田大学 国際教養学部教授
森川友義先生

政治学博士。
1955年群馬県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒、ボストン大学政治学修士号、オレゴン大学政治学博士号。
早稲田大学で「恋愛学入門」担当。『専門分野は日本政治、恋愛学、進化政治学。決めよ』など多数。

▶NEXT:恋と歌謡~②人気曲の歌詞から見えてくるものとは?

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