2022.12.27 Omiaiレポート

恋と歌謡~③優里「ドライフラワー」は究極のキュン曲!?

全5回に渡ってお届けする「恋と歌謡」、第3回の今回はキュン曲についてです。

曲全体に流れる極めて高い「キュン」度

全世代を虜にするのは、もの悲しい歌詞×マイナーコード

全世代でランキング 1 位を獲得した『ドライフラワー』は、ビルボード・ジャパンの 2021年度年間チャートでも、ダウンロード、ストリーミング、総合のすべてで年間 1 位を獲得。
令和最強の恋愛ソングともいえるこの曲は、2019 年に配信したデビュー曲のアフターストーリーとして2020年10月に発表されました。

その直後にYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』に優里が出演して披露したことで一気にブレイク。一般的にネット経由で人気に火が着くと短命に終わるケースが多い中、性別や年齢を超えて現在もカラオケランキングの上位に入っています。
その大きな理由は、彼氏とすれ違う心情を女性らしい視点で綴った感傷的な歌詞と、もの悲しいマイナーコードを絶妙に取り入れた、キュン要素が多くの人に刺さったからです。

失恋という普遍的なテーマも10~30 代の世代には現在進行形であり、40~50 代には若い頃の思い出として共感できます。
今後も幅広い世代から支持を受ける究極の恋愛ソングとして、長く歌い継がれる曲になりそうです。

マイナーコードとは何か
コードとは日本語で和音と呼ばれ、異なる音程を同時に鳴らした音(例:レ +ファ + ラ=マイナーコード「Dm」)のことです。
コードは 2 種類あり、マイナーコードは一般的に暗い響きを持ち、悲しさ、哀愁などを感じます。メジャーコードは明るい響きで爽やかな印象です。
そしてどのコードを繋ぐ(コード進行)かで、曲の印象が哀愁や喜びなど多様に変化していきます。


優里(ゆうり)
シンガーソングライター、YouTuber。1994 年千葉県生まれ。
2019年に東京を中心に路上ライブ活動を開始。2020年8月『ピーターパン』でメジャーデビュー。

音楽評論家が解説!
キュン度数の高い楽曲とテクニカルな歌い方がマッチした曲
全世代で 1 位というのは驚異的なことです。
とてつもなくもの悲しい歌詞は“キュン”を通りこしている感じもしますが、日本人が好きなセンチメンタル系であることは間違いありません。その中でもタイトルにもなっているドライフラワーという言葉がわかりやすくて上手い表現だと思います。
曲もキュンを意識してマイナーコードをサビに持ってくるなど上手く仕上げています。なおキー(調)についても、平成の J-POP ではメジャーキーの曲が多くありましたが、また最近は米津玄師の曲「Lemon」などの影響でマイナーキーの曲が増えてきました。
そして『ドライフラワー』はセンチメンタルでキュン度数が高いだけでなく、優里の歌唱力に人気の秘密があると考えています。
私は2021年にストリーミングで 1 億再生をした時の記事で「歌い方が濃厚である」と書きました。それは 1 曲の中に様々な歌い方が詰め込まれているからです。
優里本人が自身の YouTube チャンネル(『優里ちゃんねる【公式】』)で、その歌い方を丁寧にレクチャーしているので、参考にしてみるのもいいかもしれません。
この曲が発売されて2年経った今もカラオケランキングで上位に入るのは、楽曲の良さに加えて、挑戦したくなるような様々なテクニックが入っているからと推測しています。
歌うときに「難しいこの曲を完璧に歌えるようになりたい」「マスターしてこの技術を披露したい」という気持ちにさせ、歌の採点システムで高得点を取りたくなるような、スポーツ的なアプローチが強い曲だとも感じています。
音楽評論家
スージー鈴木さん

1966年大阪府生まれ。音楽評論家。
昭和歌謡から最新ヒット曲まで守備範囲は広く、国内だけでなく海外の音楽にも精通。
WEB 連載『東洋経済オンライン』『FRIDAY オンライン』などさまざまなメディアで執筆中。近著に『桑田佳祐論』(新潮社)。

▶前回:恋と歌謡~②人気曲の歌詞から見えてくるものとは?

▶第1回:恋と歌謡~①日本人はセンチメンタル?

▶NEXT:恋と歌謡~④恋心を刺激するコード進行を発見

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